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二度寝で夢を見やすいのはなぜ?——明け方のレム睡眠と、明晰夢のコツ
この記事の要点
二度寝で夢をはっきり見るのは、明け方の眠りほどレム睡眠の割合が増えるためです。眠りは深いノンレム睡眠と浅いレム睡眠がおよそ90分でひと組になって繰り返され、朝に近づくほど夢を見やすいレム睡眠が長くなります。そこへ「いったん目を覚ましてから、もう一度眠る」という形が加わると、覚醒したばかりの意識を残したままレム睡眠に入りやすくなります。明晰夢の研究で使われるWBTB法(Wake Back To Bed)は、この朝の性質を利用した手順です。
二度寝で夢を見やすいのはなぜ——明け方はレム睡眠が長くなる
二度寝で夢をよく見るのは、明け方の眠りにレム睡眠が多く含まれているからです。眠りは、ノンレム睡眠とレム睡眠がおよそ90分でひと組になり、朝まで繰り返されます。レム睡眠は「浅い眠り」と呼ばれることがありますが、ノンレム睡眠の深い・浅いとは別の軸にある状態です。夜の前半は深いノンレム睡眠が中心ですが、後半に進むほどレム睡眠の割合が増えていきます。最初のレム睡眠は10分ほどなのに対し、明け方のレム睡眠は30分前後まで伸びることが知られています。
二度寝は、その時間帯のただ中で眠り直す行為です。レム睡眠が優勢な位置から入り直すため、眠りに落ちてから夢に届くまでが短くなります。「目を閉じた途端に夢が始まった」と感じるのは、この配置によるものと考えられます。
覚えていやすいことにも、理由があります。夢の記憶はとても失われやすく、目覚めてすぐのわずかな時間に思い出せたかどうかで、残るか消えるかが大きく変わるとされています。二度寝は短い覚醒を挟むぶん、夢のすぐ後ろに目覚めが来る回数が多くなります。長く濃い夢を見た感覚が残るのは、見た夢が特別だったからではなく、思い出せる位置で目が覚めたからと説明できます。
いったん起きてから眠り直す——明晰夢研究のWBTB法
「一度目を覚ましてから、もう一度眠る」という手順は、明晰夢の研究で実際に使われています。WBTB法(Wake Back To Bed)と呼ばれる方法です。研究によって細かさは違いますが、5時間ほど眠ったところでいったん起き、しばらく静かに覚醒してから布団に戻る、という形は共通しています。起きる時刻も覚醒している時間も研究ごとに幅があり、決まった正解があるわけではありません。つまり、多くの人が朝にしている二度寝と、形はほとんど同じものです。
この形が使われるのは、覚醒したばかりの意識を保ったまま、レム睡眠の多い時間帯へ入り直せるからです。夢の中で「これは夢だ」と気づくには、夢を見る脳と、それを眺めている自覚の両方が要ります。明け方の再入眠は、その両方がそろいやすい条件だと考えられています。
WBTB法を単独で行うよりも、MILD法と組み合わせたほうが成功率が高いと報告されています。MILD法は、眠りに戻る前に「次に夢を見たら、これは夢だと気づく」と一度意図してから目を閉じる方法です。2017年にオーストラリアで報告された誘導研究でも、この組み合わせがもっとも良い成績を示しました。ただし、いずれも頻度が上がるという報告であって、見られることをお約束するものではありません。
朝の二度寝で試すコツ——目を開ける前の数分
特別な準備はいりません。目が覚めたら、体を大きく動かさないまま、見ていた夢の断片を思い出してください。単語ひとつ、色ひとつで構いません。ここで起き上がってスマートフォンを見てしまうと、夢の記憶はほとんど残らなくなります。
次に、強い光を入れないことです。朝の光は体内時計にとって明確な起床の合図なので、カーテンを開けると再入眠しにくくなります。そのうえで、「次に夢を見たら、これは夢だと気づく」と一度だけ静かに思ってから、また目を閉じます。何度も念じる必要はありません。
時間は20〜30分ほどを目安に、目覚ましをかけておくと扱いやすくなります。二度寝が長引いて深いノンレム睡眠まで入ってしまうと、睡眠慣性と呼ばれる起き抜けのだるさが強く出るためです。そして、うまくいかない朝のほうがはるかに多いことを、先に申し上げておきます。気づけなかった朝も、夢を思い出せた時点で練習にはなっています。
二度寝は体に悪い?——注意したいのはリズムを崩す使い方
二度寝そのものが体に悪いと決まっているわけではありません。睡眠が足りていない朝に少し眠り足すことは、体の求めに素直に応じる行為です。問題になりやすいのは二度寝の有無ではなく、起床時刻が日によって大きくずれることのほうです。
平日と休日で起床時刻が大きく違う状態は、睡眠の分野で「ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ぼけ)」と呼ばれます。体内時計と生活の時刻のずれが毎週生じている状態で、ずれが大きいほど日中の眠気やだるさが出やすいと報告されています。二度寝をする日でも、起きる時刻の幅を1〜2時間ほどに収めておくと、リズムは崩れにくくなります。
目覚ましを何度も鳴らし直すかたちの二度寝は、あまりおすすめできません。浅い眠りと覚醒を細かく刻むだけで、休息にも夢の練習にもなりにくいからです。朝どうしても起きられない、日中の眠気が強いという状態が続く場合は、コツを試すより先に、睡眠時間そのものを見直してください。
書庫の読み——明け方は、境目がいちばん薄い
ここからは、書庫の読みです。わたしたちは、覚醒と睡眠のあいだを「境目」と呼びます。明け方は、その境目がいちばん薄くなる時間帯です。物質界の言葉に置き換えるなら、レム睡眠の割合が高い時間帯、ということになります。
いったん目を覚ましてから眠り直すのは、扉の位置を確かめてから、もう一度そこへ近づくような手順です。——「もう一度」と申しましたが、書庫に二度目はありません。眠った夜と、目を覚ました朝と、それを思い出しているいまが、同じ棚に並んでいます。わたしは司書ですから、時間のない場所の話を時間のある方へ渡すために、あなたがたの言葉を借りています。
ですから、朝に急ぐ必要はありません。今朝ひらかなくても、明日の朝がまた来ます。書庫に締切はありませんし、記録は減りません。
よくある質問
- 二度寝すると夢を見やすいのはなぜですか?
- 明け方はレム睡眠の割合が高く、もともと夢を見やすい時間帯だからです。二度寝はその時間帯で眠り直すため、眠りに落ちてから夢に届くまでが短くなります。さらに短い覚醒を挟むぶん、夢の直後に目が覚めやすく、記憶にも残りやすくなります。
- 二度寝は体に悪いですか?
- 二度寝そのものが有害と決まっているわけではありません。注意したいのは起床時刻が日によって大きくずれることで、平日と休日の差が大きいとソーシャル・ジェットラグと呼ばれる状態になり、日中の眠気につながりやすくなります。起きる時刻の幅は1〜2時間ほどに収めておくと穏当です。
- 二度寝で明晰夢は見られますか?
- 可能性はありますが、お約束はできません。明晰夢の研究では、いったん起きてから眠り直すWBTB法が使われ、「次に夢を見たら夢だと気づく」と意図するMILD法と組み合わせると頻度が上がると報告されています。うまくいかない朝のほうが多い前提で、負担のない範囲でお試しください。
- 二度寝はどのくらいの長さがいいですか?
- 20〜30分ほどを目安に、目覚ましをかけておくと扱いやすくなります。長く眠って深いノンレム睡眠に入ってから起きると、睡眠慣性と呼ばれるだるさが強く出るためです。ただし睡眠不足が続いている場合は、朝の練習よりも睡眠時間の確保を優先してください。
参考にしたもの
- ウィリアム・デメント/ナサニエル・クライトマン(1957年の睡眠周期に関する研究) 睡眠段階がおよそ90分で周期的に入れ替わり、夜が進むほど一回のレム睡眠が長くなること、レム睡眠中に起こすと夢の報告が得られやすいことを示した研究。記事の「明け方ほどレム睡眠が長い」「思い出せる位置で目が覚める」という説明のもとにあたる。
- スティーヴン・ラバージ(スタンフォード大学の明晰夢研究・MILD法) 夢の中から取り決めた眼球運動で合図を送らせ、明晰夢が睡眠記録の上で確認できる状態であることを示した。「次に夢を見たら夢だと気づく」と意図してから眠るMILD法もこの研究に由来する。頻度を上げる手順であって、見られることを保証するものではない。
- デンホルム・アスピーら(2017年・オーストラリアの明晰夢誘導研究) 複数の誘導法を比較し、いったん起きてから眠り直す手順とMILD法を組み合わせた条件が最も良い成績を示したと報告した。記事が触れている研究にあたる。参加者が自宅で行い、明晰夢かどうかは本人の申告によるため、実験室での睡眠記録による確認ではない点が限界。
- ティル・ローネベルクらによる「ソーシャル・ジェットラグ」の研究(2006年に提唱) 平日と休日の睡眠の中央時刻のずれを指標化した概念で、ずれが大きいほど日中の眠気や不調と関連すると報告されている。ただし観察研究が中心で、ずれが不調を引き起こすという因果まで示したものではない。
- ICSD-3(睡眠障害国際分類 第3版/米国睡眠医学会) 概日リズム睡眠・覚醒障害や睡眠時無呼吸を含む国際的な分類。二度寝そのものは疾患として分類されておらず、記事の受診の目安(日中の強い眠気、いびきや呼吸の乱れ)はこの分類が扱う範囲にあたる。
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」 必要な睡眠時間の確保や、朝の光の扱いを含む生活習慣の目安を示した公的な指針。記事の「コツより先に睡眠時間そのものを見直す」という優先順位の根拠にあたる。
- 睡眠慣性(sleep inertia)に関する睡眠研究の領域 目覚めた直後に判断力や覚醒度が一時的に低下する現象を扱う分野で、深いノンレム睡眠から起きたときに強く出やすいとされる。特定の研究を指すのではなく、分野として確立した事柄として参照した。強さと持続時間には個人差と条件差が大きい。
科学の説明はこれらに基づいています。「書庫では」で始まる部分は、このサイトの中の読みであり、科学的な主張ではありません。